『 Buon Giorno!』 作業療法士Sより…

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zoom RSS 立ち上がりについて

<<   作成日時 : 2009/01/17 19:16   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 10

以前に立ち上がりの練習方法についての記事を書きました。

「立ち上がりの練習」
http://yoshiemon.at.webry.info/200710/article_9.html
立ち上がりの練習 「意味」
http://yoshiemon.at.webry.info/200710/article_10.html
立ち上がりの練習 「象徴」
http://yoshiemon.at.webry.info/200710/article_11.html

記事を書いてから2年が過ぎているので
もう1度あらためて考え直してみようと思いました。

立ち上がりができない人には座る練習をしたほうがいいと考えています。
ウソのようなホントの話です。
絶対にそう思います…と言いたいところですが、世の中何があるかわからないので
90%の確立で…と言っておきます。

…つまり、私は立ち上がれない人は、がんばって立つ練習はしないほうがいいと考えています。

立ち上がることはあきらめろ…と言っているのでは決してありません。
練習方法を考え直す必要があるのではないか…と考えているのです。

よくあるパターンの練習方法が
「立つときにはおじぎをして…足に力をいれて…ふんばって…」
だと思うのですが
実はこのような練習方法が
お身体にヘンなクセ…(例えば、腰背部の筋肉の張り)を
つけてしまっている…少なくともひどくしてしまっているおそれが
(結果的にであったとしても)あるのではないかと考えています。
そして、そのことが歩ける、立ち上がれるようになった後でも
腰痛というかたちで拡大されてあらわれる。
腰痛があれば身体はかばいますから
歩き方はぎこちなくなる。
そうなればあんまり歩きたくなくなるのは…当然だと思います。
そういう状態にもかかわらず
ただ表面だけをみて「もっと歩け」「姿勢良く歩け」と言うのは
非情だと感じるし、また、論理的でもないと感じています。
もっと歩きたくなるように、腰痛を緩和する、腰痛というかたちであらわれている身体のはたらきがよくなるような方法論を提供する…というのが専門家の仕事だと考えています。

具体的な座り方の練習方法は
上記「立ち上がりの練習」に書きましたのでご参照ください。

歩けている方でも
自分ひとりでは立ち上がれない…
なにかにつかまらなければ立ち上がれない…
手で椅子やベッドや自分の膝を押し上げなければ立ち上がれない…
そういう方はとても多いです。
そして、そういう方は決まって座り方もきれい、スムーズではありません。
でも、歩けるならきれいにスムーズに座れるようになるし
きれいにスムーズに座れるようになると今までどうしても立ち上がれなかった人が
つかまるところがあれば立ち上がれるようになるし
つかまって立ち上がっていた人はつかまらずに立ち上がれるようになります。

とにかく立ち上がれればよし、ではなくて
ちゃんと姿勢良く立ち上がらなきゃダメ、でもなくて
立ち上がれないよりは、立ち上がれた方がずっといい。
しかも、よりラクによりきれいによりスムーズにより上手に立ち上がれたほうがもっといい。
そう考えていただきたいと思います。

つまり、きれいでスムーズ…ということは身体の使い方…はたらきの問題なのですから
脳の回路を切り替える…卒業の積み重ねをする…ことで変わってくるということだと考えています。

「きれい」で「スムーズ」な立ち上がり方は
座り方を適切に練習すればできるようになります。
そうすると歩き方も安定してくるのです。
本当の話です。
でも、回路切り替えまでには時間がかかります。
今までの「力を入れる」「ふんばり」を使った立ち上がりに身体が慣れきってしまっていると
なかなか切り替えるには時間がかかります。
だから、できれば最初からヘンなクセをつけないでほしいと思います。
でも、繰り返し練習すれば身体のはたらきは良くなります。

座るときにドシンと倒れ込むようにしか座れない
立ち上がるときに1度では立ち上がれずに何度も何度も試さないと立ち上がれない
…という方は、座り方の練習をしてほしいと思います。

立ち上がれないのにもかかわらず
何度も繰り返し「力をいれて」「ふんばって」立ち上がることを努力させるのは
脳の中に適切な立ち上がりという回路ができていないのに
やれ!といってがんばらせる…ということです。
そんな方法では、できるわけがないし
もしも無理して過剰努力を続ければ
身体は本来のはたらきを抑圧してとにかく立ち上がることを優先し
身体のはたらきを混乱させてしまうのではないでしょうか。

まずは、脳の中に適切な回路ができるように
立ち上がる時には全介助で重心の移動方向に注意して一緒に恊働しておこなう。
そして座るときには身体のバランスは介助者が支え
当事者の方には重心の移動方向に注意しながら座っていただく。
目安はドシンと音がしないようにゆっくり静かにそっと座れるかどうか…です。
静かにそっと座れる…という表面的な動きは
身体のはたらきの協調の向上を示すひとつの指標だと考えています。

「歩くときには良いほうの足の動きに気をつける」
http://yoshiemon.at.webry.info/200812/article_2.html
この記事では、非麻痺側の足の運びに気をつけたほうがいい…と書きました。
シリーズになっていますのでできれば読んでいただき
私の真意をおくみとりいただきたいと思うのですが
私は決して歩いているときに非麻痺側の足の動きが「正常」と違うから
「正常」と同じ歩き方をするべく修正するためにこの歩き方を提案したわけではありません。
非麻痺側の足の運びに意識を向けると結果として全身のはたらきが高まってくる
…今まで眠っていて抑圧されていたその人自身のはたらきがあらわれてくる
そういう意味で書きました。
非麻痺側の足の運びが「べた足」なのは
身体のはたらきの低下に合わせて敢えて身体のはたらきを自粛したあらわれであり
非麻痺側の足の運びが踵から親指ができるようになった…べた足を卒業できた
ということは、身体のはたらきの向上を示すあらわれだと
実際的なひとつの指標として、同時に、身体のはたらきの高め方の方法論として
提示しました。
詳細はシリーズをお読みいただきたいと思います。
http://yoshiemon.at.webry.info/200812/article_3.html
http://yoshiemon.at.webry.info/200812/article_4.html
http://yoshiemon.at.webry.info/200812/article_5.html
http://yoshiemon.at.webry.info/200812/article_6.html
http://yoshiemon.at.webry.info/200812/article_7.html

歩行と立ち上がりと
具体的な方法論は違っていても
考え方はまったく同じなのです。

非麻痺側の足がベタ足なのは、非麻痺側の足の筋力低下が原因ではないのと同じように
立ち上がれないのは、足腰の筋力低下が原因ではないと考えています。
このことは何も脳卒中後遺症をもつ方に限りません。
骨折後の方、認知症をもつ方、腰痛のある元気な方にも
同じように言えることだと感じています。

そして
歩けていたのにだんだんと歩けなくなっちゃう方っているでしょう?
自分でトランスファーできていたのにだんだんとできなくなり
全介助でもトランスファーが大変になっちゃう方っているでしょう?
すごく多いでしょう?
巷では足腰の筋力低下、廃用、意欲がない…だからできなくなった
って簡単に言われてしまうけれど
本当にそうなのかな?
違うんじゃないかな?
私はそう感じ、考えています。










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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
興味深くいくつかの記事を読ませてもらってます。
OT一年目のシナーと言います。
立てない人に、目の前に折りたたみの机を用意して、
何度か両手を付いて立ってもらった後、机を使わずに
前傾の角度を同じようにイメージして立たせる方法を
RPTが行っていました。
その場はうまくいくのですが、なかなか習慣化は難しいようです。

こういった記事はとても参考になります。
sinner
2009/01/18 08:30
 冒頭に書かれたこと。
>練習方法を考え直す必要があるのではないか…と考えているのです。
 回復期のリハビリでは特に大切なことだと思います。私は救急病院に搬送されてから数日後にはナースの首に右手を回して、抱きついてベッドで起きあがったり、ベッドに座ったりそこから立ち上がって車椅子に座る練習をしました。そしてそれほどの日数を経ないで、スムースに立ったり座ることが出来るようになりましたが、お困りの方は多かったですね。歩けるのにどうしてだろうと思っていました。

 私の場合はとにかく歩けるようになるのが先だと言う考えかもしれませんが、両足の動きに注目するような指導や協働がありませんでした。

 そして「歩くときには良いほうの足の動きに気をつける」を読んで愕然としたのです。その後の「リラクゼーション」シリーズも然りです。

 どちらも私の体験にはありませんでしたし、書かれた書物も知りませんでした。
とても感謝しています。
マサおじさん
2009/01/18 17:10
がちゃ夫さん、面白い玉へのクリックありがとうございました。こちらの記事には反映されていませんが、メール通知でちゃんと受け取りました。
speranza
2009/01/18 18:56
sinnerさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。

初コメントなのに大変申し訳ないのですが、そのRPTが行っている方法も良くある方法ではあるのですが、私はそれでは立てるようにはならないと考えています。
仮に立てるようになったとしてもその方法では腰背部の過緊張を使って立ち上がれるようになったということなので(それでも立ち上がれるようになったのは立てないよりも良いことではありますが)いずれ腰痛を起こしてしまうことになってしまうと考えていますし、そのような身体の使い方が歩行にも悪影響を与えないはずがないと考えています。

試しにsinnerさんがその方法で立ち上がってみてください。お身体に違和感を感じるはずです。
身体は身体を守っているので身体にとって適切でないことは身につかないと考えています。もし無理して身につけさせれば身体のはたらきが崩れてしまうと考えています。
speranza
2009/01/18 18:59
このように今現在流布しているリハの方法論が実は適切ではない…ということはたくさんあるのです。
もちろん、どの療法士も良かれ…と思ってやっていることではありますが、私が問題だと感じるのは先輩から「こうしたらいいよ」と教わったことを鵜呑みにしてやっている…その方法論のどこがどんなふうに良いのか考えずにやっている…療法士が非常に非常に多いということです。
そして教わった方法論を使っても芳しい結果が出ないときに自らの方法論の検討をするのではなくて、患者さんが悪い、患者さんが重症だから…と患者さんのせいにする療法士が非常に非常に多いのです。
そここそが問題だと思うのです。

私たちは実習の時に「PLAN-DO-SEE」ということを徹底して学んできたはずです。
どうして資格をとったとたんにそれを怠ってしまうのでしょう。「考える」「実践する」「確認する」これらを意識化しておこなうことが大切なのに…。それこそが「人間」を相手にする私たち自身の拠り所であるはずなのに…。
speranza
2009/01/18 19:00
sinnerさん、1年経験を積んだら焦りだけではなくていろいろなことに疑問を感じる時期になっていると思います。
どうか目の前に起こっている「現実」をありのままに見て感じる疑問を大切にしていっていただきたいと思います。
なぜ、RPTのとった方法ではその場でしかうまく立てないのか…なぜ、私が座る練習をすすめるのか…それらの方法論のどこに違いがあるのか。

>こういった記事はとても参考になります。
なぜ、私がこういった記事を書こうと思い、そして書き続けているのか…。
speranza
2009/01/18 19:01
マサおじさん
>歩けるのにどうしてだろうと思っていました。
私も不思議に思っていました。
なぜ赤ちゃんは歩けなくても立ち上がれるのにお年寄りや障がいをもつ人は歩けるのに立ち上がれないのか…。

>どちらも私の体験にはありませんでしたし、書かれた書物も知りませんでした。
おそらくそうだろうと思います。
立ち上がりもリラクゼーションも非麻痺側の足の運びの意識化も私が考えたことなので、知らない療法士やそういう現実があるということに気づいていない療法士のほうが圧倒的に多いと思います。
いくら慢性期とはいえ脳卒中後遺症をもつ方に筋力強化をする療法士やふんばる立ち上がりをさせる療法士もとても多いのです。
療法士でさえこんな状況なのですから、マサおじさんが足腰の張りや非麻痺側のベタ足に気づいていらっしゃるということを知ってとても驚いたのです。
こういった問題について書かれた論文や図書の存在は私もわかりません。
speranza
2009/01/18 19:41
若手の多い施設では英文抄読や文献抄読を勉強会でおこなうことが多いと思います。最新の知見に触れることはとても大切だと思います。
ですが、私は論文を読みあさらなくても紹介した方法論に行き当たることができました。
おかげさまでマサおじさんはじめ多くの方に喜ばれているということを本当にうれしく思います。
私が大切にしてきたことは「SEE」です。

今、療法士に圧倒的に不足しているのは「SEE」確認する…ということだと考えています。
ある程度経験年数がたってしまうと自己防衛がはたらいて聞き入れてもらえませんから、私がターゲットに考えているのは実習生と経験3年目未満の若手です。
そして現実の利害関係のないネット社会です。

このウェブログに出会った人たちがそれぞれの場で試してみて「現実に」何が起こっているのかを考えてもらいたいと強く強く願っています。
そして私の提唱する方法論の根幹にある考え方と巷に流布しているリハの方法論の根幹にある考え方との根本的な相違について考えてもらえたら…私はとてもうれしく思います。
speranza
2009/01/18 19:44
自分でやってみると、確かに腰背部に力が入っている
なあと思いました。
ゆっくり座る方法で練習してみると、腰背部よりも
やはり四頭筋を中心とする下肢筋が働いているのが
わかります。

まだまだ勉強不足なので、speranzaさんの方法論の
根っこを理解することはできませんが、自分自身で
試行錯誤して行ってみることをしないで、既存の
まかり通っている方法を真似して続けるということの
危険性、のようなものを、speranzaさんの文章から
感じました。


自分は今老人分野のデイケアでリハビリをさせてもらっ
ています。今後の大きな課題は認知症に対するリハビリ
全般ととらえております。長い道のりだと思って
取り組んでいきたいです。

また色々と読ませて頂きたいので、
よろしくお願い致します。
sinner
2009/01/18 22:23
sinnerさん
早速試してくださってどうもありがとうございます。
とてもうれしいです。
おっしゃるとおりに、見た目と実際のはたらきとは全然違うのです。
老婆心ながら、座り方の練習をするときにはくれぐれも重心の移動方向に気をつけてくださいね。そうじゃないと結局腰を痛めてしまいます。
注意深くいろいろな人の座り方を見ていると、自然な座り方と不自然に力のはいった座り方の違いが区別できるようになってきます。

>自分自身で試行錯誤して行ってみることをしないで、既存のまかり通っている方法を真似して続けるということの危険性
おっしゃるとおりなんです。sinnerさんが記事を1度読んだだけで私が1番言いたかったことを実感していただけるなんて、とてもうれしく頼もしく感じました。

私も老健のデイケアに関わっています。
認知症をもつ方への対応というのは本当に急務だと感じています。

こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
speranza
2009/01/19 00:05

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