『 Buon Giorno!』 作業療法士Sより…

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zoom RSS 逝きし世の面影

<<   作成日時 : 2009/09/29 23:36   >>

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勉強になりました。

「逝きし世の面影」渡辺京二 平凡社ライブラリー
http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/frame.cgi?page=browse.cgi&code=76_552

今まで自分が
江戸末期の庶民の暮らしというものに対して
教科書的なステレオタイプな見方をしていたということが
よくわかりました。

江戸末期から明治初期にかけて来日した欧米人の見聞録を丹念に拾い上げ
そこに記載されていることがらから
当時の日本人の暮らしとそこに投影されている心性…を浮かび上がらせようとして書かれた名作です。
一部の批判を予見してか著者も再三記していますが
この本は決して単なる懐古主義の本ではありません。

自分の一生の意味を納得するためにも
昭和の意味を問いたい
昭和の意味を問うなら
開国の意味を問いたい
開国の意味を問うなら
開国以前のありかたを尋ねたい
…という著者の切実な思いをきっかけとして書かれた本です。

私たちが教えられたように
欧米人も幕末の日本では
庶民が権力者の抑圧と圧政に虐げられている
…という前情報をもって来日した。
ところが、虐げられているはずの庶民の顔は生き生きとしてなんと幸せそうなことだろう。
確かに暮らし向きは貧乏だが、貧困なるものは存在しない。
庶民は、形式的な民主主義の社会よりもずっと実質的に自由な暮らしをしている。
こどもを大切にし、家畜も家族同様に大切にし
生活のできる範囲ではたらき、生活を楽しむためにのみ生きていた。
働かねばならぬときは自主的に働き、油を売りたいときはこれまた自主的に油を売っていた。
子どもも大人もともに過ごし
性に対してもおおらかで、そのテの絵画や玩具も隠されるものではなかったことや
公衆浴場での混浴や家の前や村の通りにある風呂桶で行水していることも
当然のことで恥ずべきことではなかったことなどが記載されている。

あっけらかんとおおらかで
生を楽しみ、こどもを慈しみ
その一面、確固たる個の自覚がなく、精神的展開もみられない
大きなこども…という記載

庶民を開放し、高い文明をもたらそうとして来日したはずの欧米人自身の煩悶も
多数見受けられたことを紹介している。

自分がこの国にもたらそうとしている文明が
日本古来のそれより一層高いものであることに確信をもっていた。
しかし、それが日本に果たして一層多くの幸福をもたらすのかどうか
という点ではまったく自信をもてなかった
(カッテンディーケ)

この進歩はほんとうにお前のための文明なのか
(ヒュースケン)

厳粛な反省ー変化の予兆ー疑いもなく新しい時代が始まる。
あえて問う。日本の真の幸福となるだろうか。
(ハリス)

新しい時代を先導した日本の知識人たちが一様に
開国以前の日本を全否定したという記載
どこかで聞いたような…

民族としての心性は
今の私たちにも受け継がれている
けれど、暮らしぶりは激変した。
暮らしぶりがあぶり出す「ありよう」も激変した。
私たちは、二度までも自らの手で過去を裁断してきたのだ…。
外からの声に応じる…というかたちであれ…。

大きなこどもだから
大人に逆らえず?
大人の言う通りにした?
それもあるかもしれないけど
もっと積極的に応えたのではないだろうか…
安楽に暮らすということ以外には
「考える」ことがなかったのだとしたら
本当にナイーブに「信じた」のかもしれない…

たった150年前と今のこの違いようは何だろう…
氷冷蔵庫やおわんやさんの話を聞いて
なんと時代は変わったのか…と思っていましたが
もっと根本的なことがたったこの150年の間に起きていたのだ
そして
こんなにも根本的な変化に対して
大多数の人は表面的な適応ができていたのだろうということ
そちらのほうがもっと信じがたい…
ちょっと恐ろしいくらいに

河合隼雄や野田 正彰が日本人には
自然災害や戦争帰還兵のPTSDが欧米に比べ少ないということを言っているけれど
そのことと関連しているんではないだろうか

この本を読んで
著者の本をもっと読みたくなりました。
室町の庶民のありようはまた江戸とは違っていたのだそうです。
さっそくAmazonで注文しました。
「なぜいま人類史か」
「江戸という幻景」
「日本近世の起源」
もし既に読了されている方がおられましたら
ぜひ、感想をお聞かせください。

最後にこの本で1番感銘を受けた言葉です。

「他国民を研究するにあたっては、もし可能ならば無色のレンズをとおして観察するようにしなければならない。
とはいっても、この点での誤謬が避けられないものであるとするならば、せめて眼鏡の色はばらいろでありたい。
そのほうが、偏見の煤のこびりついた眼鏡よりはましであろう。」
(モース)








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