『 Buon Giorno!』 作業療法士Sより…

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<<   作成日時 : 2009/11/22 11:51   >>

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一時期、マスコミを席巻した言葉です。

この言葉の意味する本質的なものは「契約」概念だと思います。

医療保健福祉の分野では、この言葉が使われるのは
私たちはこのようにしますが、よろしいでしょうか?
はい。わかりました。お願いします。
…的なパターンが多いと思います。
介護保険が導入されて以来、ぐっと書類が増えたでしょう?
契約書とか重要事項説明書とか…

それらの根幹を為すのは日本社会にはあまりなじみのない「契約」という概念だと感じています。
この概念がこれから先、本当に浸透していくのかどうかわかりませんが
少なくとも、現在、この概念が形骸化して上澄みだけ交わされていることが多いように思います。

リハの世界において多いのは
説明する時に、お身体の状態をきちんと説明することを抜きにして
具体的な方法論だけ説明することが多いと思います。
お身体の筋緊張のこと、その一般的な特性、その人に固有の特性…などの基本を抜きにして
今することの説明だけ
例えば、関節が硬くならないように訓練します、筋力をつけるための運動です
などの今していることの説明はするという…

だけど、自分の状態が把握できていなければ
説明されたことの理解や適否の判断は、できませんよね?

このようなやり方は
熱が出て病院受診して
診断名を伝えられずに
とにかくこの薬を飲むと熱が下がります…と言われるようなものです。

人間の身体が(心や精神もだけど)
わかりきることがあるとは思えません。
だからこそ、「こう考えるから」こうやってみましょう
それで良くなれば「こう考えた」ことが合っていたということになります。
お互いに様子をみましょう
というのが、現在の医学にしろ、リハにしろ、できる最善のことなんだと思います。

今は、検査設備も検査データの積み重ねがきちんと集積できているから
かなりの精度をもって「診断」することができるけれど、100%ではありません。
掘り下げれば、どんな病気や障がいもそのはずです。
究極的には生きるということもそうなんですから。

それが顕著なのはリハだと思います。

今の状態をこう考えている
なりたい状態になるためには
こうしたらいいのではないかと思います。
いかがですか?

はい。わかりました。

お互い様子をみていきましょう。
ポイントはここです。
望ましい動きはこういう動きで
望ましくない動きはこういう動きです。
もし、そうなったらこうしてみてください。

リハにおける説明と同意とは、本来そういうものではないかと思います。

でも、現実には
こうしましょう、ここに気をつけて
ということしか教えてもらっていない方のほうが多いのではないでしょうか?

私がリハの場で出会う方は
既に何らかのリハを受けてきた方ばかりです。
こう考える…という説明をされたことのない方が圧倒的に多いのです。
もっと言うと、今の状態そのものを説明されたことがありません。
ですから、今の状態がどんな状態なのか
自分でも知らないし、担当療法士がどう認識しているのかも知らないで
表面的な関節可動域訓練とか筋力強化とかを
「してもらっている」というパターンがとても多いのです。

こんな状態では
自分の変化を自分で認識することができようはずもありませんし
自主トレが継続的にできるわけがありません。

双方ともに意図せずに
療法士に判断を委ねてしまっています。
自分で判断できる根拠を教えてもらっていないからです。
自立を促す療法士のほうが
言葉とは裏腹に、行動としては療法士に従う
…自立できないような状況を作ってしまっている
しかもそのことに無自覚で…そういう状況があるのでは?
という疑問を払拭することができません。

歩かなきゃ歩けなくなってしまう
立たなきゃ立てなくなってしまう
そういう思いを抱えておられる方は非常に多いです。
(本人だけでなく家族や療法士もハッパをかけたりしますから余計です)
けれど、それに見合うだけの身体のはたらきが備わっていなければ
かえって逆効果になってしまうのです。
そのあたりの説明を全て最初からやり直すのはとても大変なことなのです。
今まで受けていたことと違うことをやるので
(つまり言葉にはしていないけれど、双方ともに今までの方法論を否定することになりますから)
とても心配で不安なのです。

自分の身体の中で変化がみられるようになって
初めて全てのことを信用され理解され納得されるようになってきます。
そうなって初めて
自主トレを本当の意味で行えるようになるし
自分の変化を実感できるようになるので
続けることができるようになってきます。

私は確信をもっていますので
(すべてのことがわかる…と言っているのではなくて
 このような仮説ー実行ー確認というPLANーDOーSEEという過程をきちんと踏んでいる
 という確信があるので…本来当たり前のことではありますが)
それまでの間、私は辛抱はできますが
当事者の方は我慢する…ということにもなってきます。

けれど、実際にはいろいろなリハビリをやってはいても
何の為に、
何ができるようになるのか、
どんな動きが望ましくて、
どんな動きが望ましくないのか
そのようなことを何もわからずに
ただ歩く練習、ただ言われたように身体を動かす練習をしている
…そういうケースが多いのではないでしょうか?

漫然とした関節可動域訓練…という言い方がありますが
何も関節可動域訓練に限らずに
漫然とした筋力強化だっていっぱいおこなわれていますし
リハそのものが漫然としたリハビリになってはいないでしょうか?

整形疾患で
ターゲットとなる筋を明確にした筋力強化をせずに代償バリバリの立位をとっていたり
中枢疾患で
筋力強化をして筋緊張を亢進させ動きにくい身体をつくってしまっていたり
たとえ意図しなかったとしても、結果として動きにくい状況になってしまったとしたら
本人にしてみたら、やっぱり動くのがおっくうになるでしょう?
そこで「動け動け」というのではなくて
動きやすい身体をつくるのが療法士の責任なのではないでしょうか?

こういうことって
リハの世界に限らず、すごくたくさんあるように感じています。
ちゃんと考えればわかるはずのことを
ちゃんと考えないで表面的なハウツーで対応することを考えることだと誤解している

説明と同意の根幹にあるものは、自立です。
自己判断、自己選択、自己責任です。
それは双方ともに必要とされるものです。

欧米社会のような厳しい自己確立のトレーニングが為されない日本社会において
このような考え方がどこまで浸透するのかわかりません。
欧米社会に追随することが良いことだとも思えません。

けれど、少なくとも
Rehabilitationの実現を願うのならば
療法士も当事者も
誰かの言っていることやしていることを盲信するのではなくて
自分の目でみて、自分の頭で考えて、自分でやってみるという
そういうことにチャレンジしなければ願いは叶わないのではないでしょうか。

希望も責任も分かち合う
それが療法士と当事者とにできる恊働作業の意味なのではないでしょうか。















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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
>説明する時に、お身体の状態をきちんと説明することを抜きにして
具体的な方法論だけ説明することが多いと思います。<

そうだったと思います。夫の入院、通院していた病院がそうだったのかもしれませんが、今になって思えば、具体的なこと.....発症してから回復?してくる過程で起こってくるいろいろな状態については何一つ教えて頂けなかったような....。
失敗を重ねて、自分でいろいろ調べたり、質問したりで初めて知った事ばかり....。
なぜ?リハビリを受けてる時とか、そのリハビリが終了するときにこれから起こりうる状態についての説明がなかったのか、今でも不思議です。
これから起こりうる状態....適切なリハビリ(自主トレにしても)をしてないとこういうことが起こってくる可能性があるという警告だけでも欲しかった.....。
こんな状態(例えば痙性が強くなる)が出てきたら要注意ですよ、とか教えてほしかった。

こんな事を書くと、なんておバカさん!と思われるかも知れないけれど、本当に無知だったのです。

でも、一部の勉強熱心なご本人、家族を除いて、どれだけこの脳卒中の後遺症の事を知ってたり知ったりするでしょうか?
こんなに当事者が勉強したり試行錯誤をしなければならない病気だと言うことを知らなかった自分達が悪い!と言ってしまえばそれまでなのですが.......。
ひろまま
2009/11/30 23:56
ひろままさん、とても大事なコメントをどうもありがとうございます。

おっしゃるとおりで当事者やご家族が知っていなくてはいけないことをきちんと伝えていないことがあまりに多いように思います。

突然、初めて、の事態に見舞われた方が、自分で勉強したり質問したりしなければ、肝心のことがわからない…などということがあっていいはずがありません。
(でも悲しいかな、そういう現実がたくさんあるのですよね…)

初めての体験なのですから、当初は、自分に何がわかって何がわからないのかもわからない…質問しようとしても何を質問していいのかもわからないような状態なのではないでしょうか?

今年、自分の身内が入院してその時に医師から説明を受けましたが、家族として、説明された内容はもちろんきちんと聞きましたが、同業者として、説明のしかたにも耳を澄ませました(苦笑)
言われていることはわかるけれど理解はできない…ということを実感しました。
当然、帰宅後に調べまくりました。
(それにしても、今はネットを使えるから本当に調べるのがラクです。その分情報の真偽には気をつけないといけないですが…ネットがなければこのような医学的なことを調べるのはとても大変なことだと思います)
speranza
2009/12/01 21:53
現在、報道で「仕分け作業」のことが大々的に取り上げられていて、そこで「官僚のプレゼンテーション能力」が揶揄されていましたけれど、対人援助職のプレゼンテーション能力だって問題かもよ…と思いながらテレビや新聞を見ています。(ちょっと話がそれました。すみません。)

リハをはじめとするこの業界で多いのは、実は本末転倒なんだと感じています。
大切なことは、ご本人ご家族にとって必要なことを説明しなくてはならないのに、実は、自分たちの説明責任を果たすための説明になってしまっている…自分たちが言いたいことを言うのではなくて、ご本人ご家族が知っていなければいけないこと、知っている必要のあることを説明する…ということができていないのだと思います。
speranza
2009/12/01 21:54
こんにちは!
説明したという「形」、同意してもらったという「形」のために説明をしている・・・ という場面は多いですね。

医療職側はもっと伝えるための説明を心がける必要があると思うのに、その自覚がなく「説明したけど相手に理解力がなかった」と言い切ってしまう人が普通にいることに疑問を覚えます。
もちろん実際に理解できない・受け止められないという人もいらっしゃるでしょうし、自分の説明下手もあるのでしょうけれど、「説明は相手に伝わらなくちゃ意味がない」ということは意識していきたいです。
まる
2009/12/02 16:12
まるさん、こんにちは!
コメントありがとうございます。

まるさんのおっしゃるとおりだと思います。
「何を」説明したらご本人とご家族のためになるのか、
「どのように」説明したらご本人とご家族がわかりやすいのか、どちらも現実にはあんまり吟味されずに行われているように感じています。
speranza
2009/12/02 21:32

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