『 Buon Giorno!』 作業療法士Sより…

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zoom RSS 脳卒中後遺症をもつ方のリハビリ体制の現状…療法士にできる工夫

<<   作成日時 : 2009/11/02 21:06   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 4

対象者の方の体調さえ落ちついていれば、療法士にできる工夫というのはたくさんあると思います。

それは自主トレの設定です。

脳卒中後遺症をもつ方へのリハというのは
脳の中に代替回路を再建することです。

ですから、ご本人自身に
「これができるようになる」という具体的で明確な目標と
回路が新しく機能するまで繰り返し反復してトレーングすることが必須です。

ご本人やご家族だけでなく専門家と呼ばれる人にも誤解されていることも多いようですが
脳卒中からの回復者でもある栗本慎一郎さんの
「麻痺は治らないが練習したことはできるようになる」
という言葉が1番説得力のある言葉だと思います。

キツイことを言うようですが
脳卒中になってしまった…脳出血であれ脳梗塞であれ…ということは脳に刻印されています。
CTを撮れば脳出血の痕、脳梗塞の痕が残っています。
ですから、厳密に言えば元通りには戻らないとも言えるのです。
(たとえ、脳卒中になったとしても、病巣が小さかったりその後の処置が迅速で出血の吸収が早かったり血流回復が早期になされたりすると元通りになる…ということはあります)
そしてまた、周囲の脳細胞が代償して新たな脳の回路再建が起これば
今までできていたことがふたたびできるようにもなります。
でも、それは過去に使っていた脳の回路とは異なる回路を使っているので
元に戻った…のではなくて、新しい自分になった…という
文字通りの Re-habilitation なのです。
(このことは脳卒中からの回復者であるジル・ボルト・テイラーさんが著書の中で
 脳の中の配線が変わったのだ…という表現で明言しています)

話がそれてしまいましたが…
脳の回路再建のためには、本人の強い明確な目標と反復トレーニングが必須なのです。
ただよくなりたい、元に戻りたい…というような抽象的な願いではなくて
(お気持ちはよくわかりますが)
具体的に「これができるようになりたい」という目標が必要なのです。
そしてその目標の達成可能性については専門家の意見を確認していただきたいと思います.
(ものごとには順序があります。
 立てないうちから歩けるようになりたい…といっても難しいものです。
 リハの意図として立てなくても歩かせることはあるでしょうが
 能力獲得として立てないのに先に歩けるようになった…ということはあり得ません)

療法士としては
ADL向上は至上命題なのでしょうが
対象者の立場に立ってみれば
仮に統計上回復困難という範疇に入る方であったとしても
挑戦もしていないのにあきらめられるはずがありません。
ですから、挑戦するという可能性にだけはフタをしないでいただきたいのです。

そして、ADLを向上するにあたっても
具体的な短期目標を明確に立てて
おまかせリハにならないように
当事者の方自身にできる自主トレをきちんと指導していただきたいと思います。
私が担当している方で病院リハで自主トレを指導された…という方は
ものすごく少ないのです。
指導されたとしても、すごく曖昧で
とにかく歩きなさい、とにかく両手を使いなさい…といった感じで
どういう目標のために、どういう課題を、どこに気をつけて行うか
望ましい動きと望ましくない動きの説明と
望ましくない動きの時にはどのように対応したらよいのか
そういうことを具体的に指導されていないのです。
(はっきり言ってそのように指導されたというケースは、ゼロなのです)
自主トレの設定は、療法士がその気になりさえすれば今すぐにでもできることだと思います。

ただ、自主トレが困難あるいは危険という方もおられるとは思います。
そのような方でも、介護上の注意点について
ご家族の方へ具体的に指導していただきたいと思います。
よくあるパターンが
「転倒に気をつけてください」と抽象的一般的なことを言うことはあっても
目の前のAさんという方の場合には、
具体的にどこをどんな風にすれば転倒に気をつけるということになるのか
具体的に指導している…という人は本当に本当に少ないのです。
 
一般的抽象的なことではなくて
具体的なことを伝えられるということが
固有のAさんを見ている「担当者の意義」だと思うのです。

ですから、私は「転倒に気をつけてください」というような抽象的な表現はしません。
人によって時によって違いますが、たとえば、
右足の親指を意識して歩くようにすれば転びにくくなりますとか
立ち上がってすぐに歩き出さずにいつもの足慣らしをしてから歩き出すようにしましょうとか
具体的にその時のその方のポイントについて表現するようにしています。
リハの時に直接言いますし、リハ実施計画書にもそのように記載しています。

また、杖先ゴムや靴底の摩耗状態の確認、
人によっては長さ調節式の杖のネジなど(!)の確認はこまめにするようにしています。
こういうところを確認している人って何故か本当に少ないんです…。

具体的…ということから話がそれてしまいました。
すみません…話を元に戻します。

療法士は当事者の方がリハ室に来て
所定の時間のリハをして終わり…ではなくて
当時者の方の1日のスケジュールを想像して
その方だったらどんな1日を過ごせるのか
その方の心身の能力と困難と特性を理解していれば
リハ的な過ごし方の工夫を考えることができるのではないかと思います。
(ただし、あれもこれもと詰め込みすぎると逆効果です。
 詰め込み過ぎる…というのは、結局はその方を適切に把握できていないからこそ
 起こることだとは思いますが)

たとえば
療法士のリハ時間をADL訓練に割いて終わりなのではなくて
リハ時間は、機能的な訓練をしてADL訓練は自主トレにまわすとか
逆にリハ時間はADL訓練をして、機能的な訓練は自主トレにまわすとか
そういう工夫だってやろうと思えばできるのではないでしょうか?

適切に自主トレを設定できる…ということは
療法士にとっての挑戦でもあります。
その方の能力と困難と特性をきちんと把握できていなければ
適切な自主トレは設定できないからです。

繰り返しますが
実際のリハにしても
自主トレにしても
脳の代替回路の再建が目的なのですから
そのために必須なのは
「具体的な目標設定」と「反復トレーニング」です。

そしてこの時に最も重要なことは「具体的」であること、なのです。













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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
>元に戻った…のではなくて、新しい自分になった…という
文字通りの Re-habilitation なのです。

そうですね。正にそう思います。
“新しい自分”になっていくこと。
それが“リハビリテーション”。
僕も最近、そういう風に考えるようになりました。

ただ、やっぱり往々にして多いのが、
「こんな動作をしてはならない」といった呪いをかけるような禁止事項でがんじがらめにしたり、「あれしなさい」「これしなさい」と言うだけだったり・・・。
かと思えば、「こっちが散々言ったのにしない。困ったもんだ」と文句を言い出したり。

これがリハビリテーションのあるべき姿なのだろうか、と思います。
できるように僕らが考え、実行していくことが必要なのに。
それが仕事なのに。

患者さんや利用者さんが“新しい自分”になっていけるよう、精一杯お手伝いしていけたら、と思う今日のこの頃です。

記事を読んでの感想になりました(笑)
510
2009/11/02 22:27
 療法士さんは、どのような教育を受け、国家試験に合格し、現場での研修を受けられて仕事に就いておられるのか知りません。
 ここに書かれた記事を理解した上で、自分の考えとして実践される療法士さんが増えることを期待しています。

マサおじさん
2009/11/03 12:45
510さん、コメントありがとうございます。

>ただ、やっぱり多いのが (中略) 
>これがリハビリテーションのあるべき姿なのだろうか

私も同じように感じています。
同じリハ職として本当に哀しいやら情けないやら…
でも、グチばっかり言ってるわけにはいきません。
どうしたら状況が変わっていくのか…ということを考えています。
私ひとりにできることはたかが知れています。
でも、ムダになることは決してない…投じた一石の石が消えてなくなることはあり得ない…そう考えて思案中試行中です。今回の一連の記事もそのひとつです。

510さん、今後ともよろしくお願いします。
speranza
2009/11/03 20:35
マサおじさん、私が感じることは療法士は卒前の養成過程において、あまりにも枝葉の部分ばかり教えられて肝心の幹や根っこのところは教えられていないのではないか…ということなんです。

510さんのコメントにもありましたが、療法士の仕事は対象者が運動学習という学びの援助、つまり変わることの援助が仕事の本分でありながら、自らは変わることを忌避するという…そういう場面が非常に多いことに対して違和感を感じてしまいます。

そういう傾向は、知識を誰かに教えられたことはあっても、自ら学んで知識を血肉化するという経験のなさとも関連しているように感じています。

「脳卒中のリハ=脳の代替回路再建」ということの意味が理解できていないからこそ、非麻痺側であったとしても筋力強化をすることができるのだろうとしか思えません。

>自分の考えとして実践される療法士さんが増える
おっしゃるとおりだと思います。
speranza
2009/11/03 20:51

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