『 Buon Giorno!』 作業療法士Sより…

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zoom RSS 脳卒中後遺症をもつ方のリハビリ体制の現状をふまえて…本人家族が気をつけること

<<   作成日時 : 2009/11/03 22:52   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 9 / トラックバック 0 / コメント 4

自主トレの説明をする前にまず注意事項をお伝えしたいと思います。

良いことをしようとする前に
まず悪いことをしないように気をつける…というのは
私のポリシーでもあるのですが
麻痺側上肢のリハビリについてはとても大切なことです。

絶対にしてはいけないことがあります。
それは麻痺側上肢をひっぱってはいけない…ということです。
起き上がる時や、立つ時、歩く時など
手をひっぱって助けてあげたい衝動にかられたとしても
決して麻痺している手をひっぱらないようにしてください。
特に脳卒中発症直後の腕がダランとしている状態の時には絶対に何があってもダメです。

介護者がひっぱるのもダメなだけではなくて
当事者の方ご本人がひっぱるのもダメです。
リハビリだからがんばろう…などと
とにかく動かそうとして
麻痺していない手で麻痺しているほうの手をもって
グイグイ前や上にひっぱるようなことは決してしないでください。

肩の関節はとても痛みが生じやすくまた1度痛めてしまうと治るのに時間がかかるからです。

じゃあ、もしも、ご家族がご本人を助けてあげたいと思ったときに
ひっぱってはいけないのならどうしたらいいの…ということになると思いますが
具体的な方法論は担当者に確認していただくとして
ポイントだけ申し上げると
手ではなくて身体そのもの…体幹…背中の後、脇など…を支えるようにしてください。

そして、具体的な注意点は必ず医師や担当療法士に確認してください。
「絶対にしてはいけないことって何かありますか?」
「生活の中で気をつけなくてはいけないことって何かありますか?」
これらのことがらは、本来は尋ねられる前に伝えておかなくてはならないことです。
が、案外伝えられていないことも多いようなので…
聞いたことがなければ是非確認してください。




そして、もうひとつ
最初に脳の代替回路再建のお話を簡単にしたいと思います。
このところがご理解いただければ
主体的なリハへの取り組み、自主トレや療法士との恊働作業の大切さ
ということの認識も容易になると思われるからです。

下の図は、脳の回路を簡単に図式化したものです。
画像


たとえば
右手を上に上げる…という意思をAとします。
そうすると今までは「a」という回路がはたらいたので
右手を上に上げることができた
けれど
脳卒中で「a」という回路に含まれている脳細胞が死んでしまったので
「a」という回路が働かなくなってしまった
そこで
右手を上げられるようになりたいので
今度は「b」という回路を新たに「a」回路の替わりとしてはたらくようにする
これが脳卒中後遺症をもつ方へのリハビリなのです。
そして
「b」回路が「a」回路よりも深く太く刻まれた時にようやく
右手を上げるという意思Aに対し
脳に痕跡としては残っている「a」回路ではなくて
「b」回路がはたらいて右手が上がるようになる…のです。
(図のようなプラレールをイメージしていただいて
 線路は2つあるけど一方の線路だけを使う…という状態をご想像ください)

今まではたらいていなかった「b」回路がはたらくようになるまでには時間がかかります。
そして「b」回路がただはたらくようになるだけではなくて
その「b」回路がかつての「a」回路よりも強固にならなければ
意思Aに対しオートマチックにかつての「a」回路がはたらいてしまいます。
まず、「b」回路をつくること
そして、その「b」回路を「a」回路から切り替えるために
何回も何回も「b」回路を使うことが必要なのです。

手を上げるぞという強い意志Aをもちながら
繰り返し繰り返し「b」回路を使う
つまり
具体的で明確な目標をもちながら
反復トレーニングをおこなう
ということが大切なのです。

その間、時間がかかります。
がんばっているのに、まだ「a」回路がはたらいてしまっていると手は動かない
(回路自体は回路として完結して機能していなくても
 痕跡として回路は残っています)
ということになってしまいます。
この時に、一生懸命な人ほどあぁがんばっても動かないのかな…と感じるかもしれませんが
ここであきらめてはいけません。
今は新しい回路を作っている途上なのだ…そう思って努力を続けてください。

この時期はとても辛い時期かもしれません。
皮肉なことに
具体的で明確な目標をもっている人ほど
できない…ということを明確に認識させられるからです。
この変化がみえるまでの時間を耐えられない人もいます。
でも、ここががんばりどころなのです。
そこを通り越すと
具体的で明確な目標をもっている人は
小さな変化に気がつきやすいのです。

いかがでしょうか?
ご理解いただけたでしょうか?

代替回路再建は
具体的で明確な目標をもって辛抱強く反復しても時間がかかるのですから
もしも
目標が抽象的で曖昧だったら…
お任せリハで自分の身体を預けてしまったら…
トレーニングを世間話をしながらやったら…
もっと時間がかかっても当たり前ですよね?

人生経験豊富な方は、よくよくお感じのこととは思いますが
人生、自分が努力したことが常に100%結果が伴うことばかりではありませんよね。
リハビリも同じです。
自分が努力したことが常に100%できるようになるかどうかはわかりません。
けれど努力をしなければできるようになるはずもありません。

あきらめずにがんばってほしい…
変化の見えない時は出口の見えないトンネルの中にいるように感じられるかもしれません。
真っ暗なトンネルの中では
入り口からどのくらい進んだのかも
出口までどのくらい進めばいいのかも
見当がまったくつかないから余計に心細くなってしまうかもしれません。

でも、
トンネルには入り口だけではなくて出口があります。
入り口から入ってきたのだから出口の方向はわかっているのです。
後は、出口が見えるようになるまで進んでいけばいいのです。

この気持ちで、あきらめずにリハビリを続けていただきたいと思います。











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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
>トンネルには入り口だけではなくて出口があります。
>入り口から入ってきたのだから出口の方向はわかっているのです。
>後は、出口が見えるようになるまで進んでいけばいいのです。

>この気持ちで、あきらめずにリハビリを続けていただきたいと思います。

 とても分かりやすい言葉です。
 麻痺手が動かない皆さんは、この言葉を大切にして、努力を続けてほしいと思います。
 もちろんこの記事全体を理解していただくことが不可欠ですが。

 
マサおじさん
2009/11/04 09:06
マサおじさん、コメントありがとうございます。

今、日本はとても便利な世の中になって努力を続けなくても願いは叶うようになってしまいました。
お水を重い思いをしながら用心しながら運ぶこともないし、火加減の調整をしながらご飯を炊くこともないし、冷たい思いをしながら洗濯することもなくなりました。
電車は5分待てば次の電車が来ますし、たいてい、ダイヤ通りに運行しています。

だからこそ、一層、努力を「続ける」ことが困難な世の中なのかもしれません。
そんな中にあって、黙々と地道なトレーニングを続けることは一層困難なのかもしれません。

でも、だからこそ、あきらめずに続けていただきたいと思うのです。
努力がムダになることなんて決してない…そう感じています。
speranza
2009/11/04 20:41
うむむむ。
やはり、とても勉強させてもらってます。専門の方の専門の見識にははっとさせられる。
特に今回のような事例を、多くの介護士は知りたいんじゃないかと思います。

今度、個人的な事を(勿論、介護現場の事で)いくつか質問させて頂いてよろしいですかね?
とかドキドキしながらお願いしてみます。

もっともっと勉強しないとなぁ。
オカザキレオ
2009/11/04 22:50
オカザキレオさん、コメントありがとうございます。

>多くの介護士は知りたいんじゃないかと思います。
多くの介護士に知ってもらいたいと思います。
そして、その1つ1つの知見をきっかけに「自分の目で見る」「自分の頭で考える」ということをしてほしいと切に願っています。
(このことは介護士に限らない話ですが…)

ご質問がありましたら、メールでもコメントでもいつでもご遠慮なくどうぞ。私でお役に立てることがあるのならうれしく思います。お待ちしています。

>もっともっと勉強しないとなぁ。
世界に対して、自分が関わった分だけ、世界のほうから教えてもらえる…そんな気がしています。
あぁ私もがんばるぞぉ〜!
speranza
2009/11/05 00:06

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