『 Buon Giorno!』 作業療法士Sより…

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<<   作成日時 : 2010/03/28 21:50   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 7

決して悪気があるわけではないのでしょうが、結果として医療保健福祉関係者が暗示をかけてしまってるんじゃないか…と思うことがよくあります。

いわく
「がんばって歩かないと歩けなくなりますよ」
「痛くても我慢してやらないと手が硬くなっちゃいますよ」
「足腰の力をもっとつけなきゃ歩けませんよ」
etc。etc。…。

患者さんやご家族の方は
(当然)人生で初めて遭遇するできごとなので
医師や療法士や看護師や介護職などの「専門家」と呼ばれる人たちの言葉を
まず、信用すると思います。(当然)

そして、脳卒中で感覚障害や高次脳機能障害も起きると
ご自分の身体への感受性や認識が低くなってしまいます。
病前にとにかく「為すことをがんばる」タイプだったりすると余計です。

発症からの経過の中でお身体が硬くなってきても
「ヘンだな?」と思いにくい構造が既に前提としてあるわけです。

ご本人もよくなりたい一心で
いろんなことに挑戦されると思います。
マヒ側の手で5キロの米袋を持ってみた…という方や
水の入ったバケツをもったら手に力がつくんじゃないか…と言った方を知っています。

ご家族だってよくなってほしい一心で
「がんばれ、がんばれ」と声をかけ
よくなる可能性があるのなら何だってやってみようと思うと思います。

そのような状況にあって
専門家と呼ばれる人たちから
具体的ながんばりかたと具体的な注意事項の指導もなく
「がんばって歩くこと」
「がんばって手を使うこと」
「もっと力をつけること」
そう言われたとしたら…

「がんばればがんばっただけ効果がある」
「力をつければ動くようになる」
そう思っても不思議はありません。
そしてその方向で努力をしても不思議はありません。

多くの場合に
お身体が硬くなってきていても
その変化とリハビリとの因果関係には推測が及びません。

良かれと思ってやっていることで
専門家がやれと言ったことで
悪い結果が起こりようはずがない
そう思っても不思議はありません。

誤解してほしくはないのですが
リハビリは無用だと言っているわけでは決してありません。
できなかったことができるようになるためには
リハビリは必須です。
練習しなければできるようにはならないし
より良いできかたでできるようになるために練習が必要です。

けれど
その時に結果として練習が適切だったかどうかの振り返りが大切です。
やりすぎてはいないか
方法は適切だったかどうか
そして練習前後のリラクゼーションも同じくらい大切なのです。

マヒ側の緊張を上げずに練習することができればよいのですが
まず、多くの場合にそれは難しいことのように感じています。
身体が動きやすいようにリラクゼーション
がんばって練習した後にリラクゼーション

よくある誤解が
運動した筋肉…手を使ったら手の筋肉だけほぐす…というものですが
前の記事で書いたように
どんな運動も全身を使います。
とりわけ困難な課題に挑戦した後は影響が全身に及びます。
往々にして、非マヒ側の筋肉もパンパンに張っていたりします。

ストレッチは、該当筋の筋肉を伸張させることですが
リラクゼーションは、適切に行えれば全身の筋肉の緊張をほぐせます。
硬くなっていた筋肉が緩んできます。
ストレッチは伸張によって該当筋の弛緩を図るのが目的ですが
現実には、ストレッチでは弛緩しきれないだけでなく
不適切な方法で行えば
該当筋の筋緊張をかえって亢進させてしまったり
お身体の他の部分に過剰な筋緊張を生じさせてしまっている場合もあるように感じています。

残念なことですが、現行のリハビリにおいては
リラクゼーションを意識する療法士は少数派です。
非マヒ側の状態を意識する療法士は少数派です。

私は
動作だけでなく
身体がどうはたらいているのかということに
もっと意識を向けたほうがいいのではないかと考えています。

身体のはたらきは身体の内部で起こることなので
その全容は目には見えませんが
それでもその一端は現実に顕われています。

そこを見ようとするかどうか…なのだと感じています。

多くの場合に
脳卒中後遺症をもつ方のリハビリにおいて
まず行われることは
マヒしている身体が動くようになっていく
ということと
身の回りの動作ができるようになっていく
ということだと思います。

けれど
その場合に
非マヒ側の身体に注意をする療法士は非常に少ないと思います。
なぜ
片麻痺の方の非マヒ側下肢のべた足歩きについて
http://yoshiemon.at.webry.info/200812/article_2.html
注目されていないのでしょう?

おそらく
非マヒ側なんだから問題なくちゃんとできているはず
…そういう思い込みがたくさんの人の頭に刷り込まれているからなのではないでしょうか。
身体を全体として総体として捉えるのではなくて
「リハビリ=マヒ側の治療、練習」という思い込みがあるからなのではないでしょうか。

「頑張るノンちゃん」というサイトで
ひろままさんが私の記事を紹介してくださいました。
http://blog.goo.ne.jp/hiro111_1948/d/20100328

良かれと思ってのことでしょうが
記載されているような医師の言葉は、非常にしばしばよく聞く言葉のひとつですが
その言葉がかえって暗示にかけてしまう結果となってはいないでしょうか。

身体の調子がおかしくても
寝たきりにならないように
歩けなくならないように
必死になって歩く
そして、歩きづらくなってきた自分を自分で責める
身体を休めることに罪悪感を抱き
結果として、運動と休息のバランスを崩し
歩きづらいのに無理して歩き
歩きにくいので歩かなくなり
その結果として、言葉通りになってしまう…
そんなことが起こってはいないでしょうか。
ここでは歩くことを取り上げましたが
マヒしている手の練習にしても同様のことが起こっていないと誰が言い切れるでしょうか。

>リハビリの仕方しだいでは後遺症を酷くしてしまうかもしれないと.......。
>筋緊張を助長してしまうかも知れないと........。

このような根本的な問題について
医師も療法士もどれだけ指導をしてきたでしょうか。

より良く身体が動くように
がんばったほうが効果的です。
でも、その「がんばる」ということは「ひたすら」がんばることではないと思うのです。

身体をただ単に動かすのではなくて
身体と心と頭とをいつも総体として
動き、感じ、考える
総体としてのはたらき、がんばる、なのだと思うのです。

がんばるということは
動くということとリラックスするということの両方をおこなえるということ
(脳卒中後遺症をもつ方がリラックスする…ということがどれだけ難しいか…!)

具体的に
どんな運動をどのくらい運動したらいいのかということは
ちゃんと身体に聴けばちゃんと身体が応えてくれる
少なくとも「キツイ」ということは応えてくれます。


『「現場からの治療論」という物語』神田橋條治 岩崎学術出版社
http://www.iwasaki-ap.co.jp/2006/03/post_1.html
という本に
著者の「身体さん、語って」という一文があります。

実は困った時には
「どうしたら○○さんのお身体がラクになるのか教えてください」
と自分の手を通して○○さんの皮膚に
心の中で密かにお願いしている私としてはビックリしました。
(ここの部分は笑われてもいいと思って書いています)

似たようなことを考える人はいるんだなぁ…と思いました。

でも、実際にはそこまでしなくても
そういう見方をするだけでも
わかることは随分違ってくると思います。

ちなみに蛇足とは思いますが
神田橋先生はその世界で知らない人はいない、大御所の精神科医です。


話を元に戻して…

人間ってすごい。
人間の精神も身体もすごいはたらきをしているのだと感じています。
この気持ちは、年々強まることはあっても弱まることはありません。

かつて
日々の暮らしの中の身近に
人間ワザのすごさが満ちていた時代があったのでしょう。

今は、便利な社会になりそれが当たり前となって
便利な機械が身の回りにあふれかえって
人間ワザを繰り出す機会がほとんどなくなってしまったのかもしれません。

たとえ、障がいをもったとしても
人間の心身のはたらきのスゴさに変わりはない。
だからこそ、非マヒ側下肢のベタ足歩きが多くの人にみられているのだと思います。

障がいをもつ人も
健常と言われている人も
自分の身体を信頼できるように
自分自身を信頼できるように

誰かの暗示からは解き放たれますように

抱えざるを得ない以上の、余分な苦しみからは解き放たれますように

そして
対人援助職の一員として
誰かに暗示はかけないように
願わくば
希望の灯りを抱けるような
そんな場を共有できますように

この記事がその一助となりますように















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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
今晩は。

なんでしょう!この寒さは。
エアコンを真冬の時より設定を高くしても足腰が冷え込んで、膝かけを腰に巻いて.....パソコンに向かってます。(笑)
夫も今日は少し身体が固くなっています。

昨日は、私達の拙いブログを紹介して下さってありがとうございます。
あまり自分の浅はかさを書いたりは....と思ってたのですが、先日来のsperanzaさんの記事を読ませて頂いて、「そう、そう、本当に!」とすこし”うずうず”してました。

先日、久しぶりに障害者スポーツセンターに行きました。丁度、近くに用があったので「少し歩いてお昼でも...」と。
そこで、以前、よくお会いした方が歩行練習をしてらっしゃいました。
半年位前にお見かけした時は、{随分頑張って杖なしで歩いてて、でも、それなりに上手く歩けるようになってる}、と感心してたのですが、、、、。
でも、今回は、夫がどんどん酷くなって来てた時のような歩き方をしてました。
それでも、一生懸命に歩いてらして....少し心配になりました。その方にとって”余計な心配”になればいいけど、と思ったものです。

いろいろな事を自分達で勉強して考えなければ、へたすれば、誤ったリハビリでだんだん状態が悪くなって寝たきり{せっかく頑張って歩けるようになってても}になってしまっても、脳卒中の後遺症で仕方がない!ということで済んでしまう可能性もあるんですよね?
辛いですよねー。

夫の身にはまだまだ、いろいろ困難な事が起こってくるかもしれません。
speranzaさんが書いて下さってるように{身体の声に耳をすませて...}と思っています。




ひろまま
2010/03/29 23:37
ひろままさん、コメントありがとうございます。

ほんと、寒いですよね〜。いったん暖かくなったから余計にこたえます…。
こういう時はお身体も硬くなりやすいようです。

おっしゃるとおりで
がんばらないから、歩けなくなる歩きにくくなる
のではなくて
がんばり過ぎてしまったから、歩けなくなる歩きにくくなる
そういうケースが多いのではないか
その上、そういう現実に本人も療法士も気づかずにいる
それってあんまりではないか
そして、もしもこういった現実が拡大再生産されているとしたら…?

練習しなければできるようにはならない
それは事実です。
けれど、練習したことが逆効果になる
そういうことだって、本当にあり得るのです。

>誤ったリハビリでだんだん状態が悪くなって
>脳卒中の後遺症で仕方がない!ということで済んでしまう可能性もある

悲しいかな、本当にそういう現実があります。
杖無し装具なしで靴下で歩けるようになったと喜ぶ一方で身体がガチガチになり痛みも出てきているのに、リラクゼーションの必要性を説いても認識できない…そういう方は決して少なくありません。
療法士とご本人との共同幻想でそうなってしまっているのだと思います。
いろいろな歩き方ができるようになるのはスゴイことです。
より制約の少ない方法で歩けるようになるのはうれしいことです。
けれど、同時にお身体に無理が生じては…
一時的にできても、その後になって歩きにくく辛い思いをするのはご本人です。
(身体がサインを出してるのに、それでも無理するから転倒などが起こるのではないでしょうか)
ここでは歩くことを例に出しましたが、歩くことだけではなくて、手を使うことでも、頑張って手を使いすぎることでかえってお身体を悪くしてしまうことも現実に起こっているのです。
speranza
2010/03/30 21:43
量的にも質的にもリハビリの方法論が適切だったかどうか、それはその都度自分の身体に聴いてみないとわかりません。
ほんのちょっとした加減で効果的にも逆効果にもはたらくのです。
同じことをしていても
その時の体調や陽気によっても変わってくるのです。
その違いは自分の身体にしかわからない。

ご自身の、あるいは、ご家族の
お身体の声に耳を澄ませて感じとっていただきたい…そう思っています。

そして、願わくば…
療法士をはじめとする専門家の人たちがこの記事を読んで、
リハの常識や過去の知識に盲従するのではなくて、
目の前にいる方のお身体の声を聞き取ろうとしてくださることを、
その声が語っていることが意味していることを、
考えてくださるようになることを
…期待しています。

>その方にとって”余計な心配”になればいいけど
ひろままさんにしてみたら、きっととても他人事とは思えないのではないでしょうか…。
ひろままさんがそんな心配をしなくてすむように…

それは私たち療法士の責任なのではないでしょうか。
speranza
2010/03/30 21:48
起床時身体がカチカチで腕のつっぱりもひどくなるばかりです。身体が疲れているのじゃないかと言われました。この病気してから疲労感が感じにくいようです。感じないだけで相当疲れがたまっているのでしょう。毎日1時間の歩行、今の私には無理があるのでしょうね。でも歩かないと歩けなくなるという不安からついつい歩いてしまいます。今日は雨らしいし、ゆっくりします。
イボンヌ
2010/04/02 09:10
イボンヌさん、先日のご提案の繰り返しになってしまいますが…ご自身のお身体に起こっていることが真実なのです。

ひろままさんが障害者スポーツセンターの近くで出会った方も、かつて、ひろままさんのお連れ合い様も、一生懸命がんばって歩く練習をしていたのに段々悪くなってきたのです。
(こんな書き方してスミマセン…)
がんばって歩いていたのに悪くなってきた…ということは、がんばって歩く以外の方法を考えるべきだ…という身体からのサインなのではないでしょうか?

焦りと不安でいっぱいだから歩かずにはいられないのかもしれませんが…。
イボンヌさんのお身体に今必要なことは歩行練習の距離か時間か頻度かいずれかを減らすことを実際に行ってみる。
新しく始めた手の練習はいったん全て休んでみる。
それだけでは悪くはならなくても良くはならないので、きちんとリラクゼーションをしてみる。担当の療法士にしてもらえないようなら、評判の良い接骨院か訪問マッサージを探して筋肉をほぐしてもらえるように依頼してみる。
適切に筋肉がほぐれれば、終わった後にお身体が軽く感じて動きやすくなるのを実感できると思います。
それがイボンヌさんのお身体の答えだと思うのですが…。
speranza
2010/04/02 22:04
アドバイス有難うございます。つい発症した年の歩きに戻れないものかと無理を重ねてきました。杖なし歩行で頑張ってた頃は腰痛が出ました。歩行を休んだらすぐ治りましたが、最初のサインだったのですね。
イボンヌ
2010/04/03 09:54
イボンヌさんに、最初のサインとそのサインが意味していることをきちんと教えてくれる人が誰もいなかった…という現実をとても悲しく思います。

でも一病息災!

歩くことも、マヒしている手を使うことも、
「ただひたすら頑張るだけでは、効果がないどころか逆効果にもなる」ということを身をもって体感できたからこそ、これからのリハビリに活かすことができると思います。

手前味噌で恐縮ですが、もし良かったら私の脳卒中関連の記事を読んでみていただけますか?
たぶん「そうそう、そういえばそういうことがあった。そうなんだ。」と思っていただけるのではないかと思います。

ちなみに…
イボンヌさんはもちろんですが、このウェブログにお立ち寄りくださる多くの方にとっての無用な誤解を避けるために敢えて書きますが…
私はイボンヌさんに、杖無し歩行は無理とか1時間歩くのは無理とかマヒしている手は無理…などと言っているわけでは決してありません。

ひたすら歩く、とにかく手を使う…というような「今のやり方では」無理です。と言っているだけです。

今は、まずはお身体の回復を「積極的」に待つ。
そのうえで違うやりかたで再挑戦されたらいいと思います。
speranza
2010/04/03 19:21

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