『 Buon Giorno!』 作業療法士Sより…

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zoom RSS 脳の可塑性は常に存在する

<<   作成日時 : 2010/03/07 22:00   >>

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けれど、痙性の問題も常に存在する

脳卒中後遺症をもつ方のリハビリにおいて
この両方の理解が徹底していないことが原因で
さまざまな問題や誤解が起こっているのではないでしょうか。

脳の可塑性は人間の人間たる所以のひとつです。
発症から何年経過したとしても
生きているかぎり、その可塑性は常に存在します。

ただし、
それは「元に戻る」「治る」「回復する」ということではありません。
前にできていたことがもう1度できるようになったとしても
それは「元に戻った」のでもなく「治った」のでもなくて
新たに「再習得」したものなのです。
何故なら、脳の中の配線は新しいものなのですから。
文字通りに「Re-Habilis」なのです。

どっちだって同じじゃんって思われるかもしれませんが
言葉を適切に使うということはとても大切なことだと考えています。
言葉を適切に使える…ということは、概念の整理がきちんとできている
ということをあらわすからです。
言葉を曖昧に使っているということは、
概念、思考が曖昧だということを意味すると考えています。

脳卒中後遺症による片麻痺のリハビリとは
脳細胞死滅により機能不全に陥った手や足を動かすという回路のかわりに
脳の中に代替回路を形成して手や足を動かす回路を創り出すというものです。
いくら手や足の筋力強化をしても脳の代替回路は再建できません。
それどころか連合反応を強めて全身の筋緊張を亢進させてしまいます。

脳の可塑性は何年経っても常に存在する
と同時に、
身体が思うとおりに動きにくい
勝手に力が入ってしまうなどの痙性という筋肉の緊張の異常も常についてまわります。
(ダランとしてしまう弛緩という状態もあります)

動作をただ単に反復練習すればするほど
動作ができるようになるというわけではありません。
(反復練習そのものを否定しているわけではありません
 反復練習は必要なことです)
痙性という筋緊張をコントロールしながら
できなかったことができるように
できていることがより円滑にできるように
練習を積み重ねていく…ということが大事なのです。
おどかすわけではありませんが、
ここで痙性を無視して動作の練習をがんばりすぎてしまうと
筋肉の伸縮性が限られてしまって
1度はできていた動きができなくなったり
痛みやしびれが出てきて動きにくくなることがあります。

このあたりはなかなかご理解いただくことが難しいようですが
リラクゼーションの重要性については、もっと多くの方に知っていただきたいと思います。

指が丸まって伸びにくくなった
動く時に背中や腰が痛い
あおむけになると麻痺している足が宙に浮いてしまう
横向きになると後にひっくり返ってしまう

このような時は赤信号です。
今、為さっているリハビリの量や質や方法論を見直したほうがいいと思います。
たぶん、このような状態に陥る前に
お身体の硬さが目立ってきていたはずで
その段階できちんと対応できていれば
そこまでの状態には至らずにすんだのではないかと思います。

お身体が硬い、痛い、しびれる…と訴える方はいても
リハビリを少し控えるように言うと「?」となる方が多いです。
リハビリをがんばっているのに何がいけないのか
と思われるようですし
「歩かないと歩けなくなっちゃう」
「動かさないと動かせなくなっちゃう」
という強迫観念のようなお気持ちを抱いておられる方が多くいらっしゃいます。

介助歩行中に転倒してしまった…という方がいて
みんな「歩かせないと歩けなくなっちゃう」と言いましたが
「今は歩かせないほうがいい」と説明して介助歩行の練習はしませんでした。
当時は大ブーイングでしたが
結局、その方はちゃんとまた介助歩行できているのです。
そういう経験もありました。

論理的な説明よりも流布している言説を鵜呑みにする人がいかに多いことか…!
みんながしているから正しいと思っている
思考停止、判断強行…です。
そして、大ブーイングをしたことについての反省も謝罪も検証もありませんでした…。

人間だからミスもある
科学は過去の修正の上に成り立つ

そういう当たり前の前提が薄れてしまっているのではないでしょうか。

あまりにも便利な社会になってしまったがゆえに…
ボタンを押せば願いが叶う社会になってしまったがゆえに…
意図したことは実現するのが当たり前の社会になってしまったがゆえに…

リハやケアの世界でも「対応」としての知識と技術が求められて
その状態が何をあらわしているのか
目で見て考えて感じて…という過程が
すっぽりと抜け落ちてしまっているように感じられてなりません。
まるで、パズルのピースを当てはめていくような
そんな印象を抱いてしまいます。

人間の身体も精神も
もっと豊かで複雑なものです。

大切なお身体です。

誰かに委ねてしまわずに
ご自身のお身体の声に耳を澄ませていただきたいと思います。

どんなに良いと言われていることでも
「今」「自分の」身体に合っているかどうか
やってみてその結果によって検証してみてください。

私たち療法士にも
もっと相手のお身体の声を聴くことが求められているのではないでしょうか。

パズルのピースを当てはめてみたら
そのピースがはまったとしても
他のピースが歪んでしまった
…そんなことがないかどうか
ひとつのピースだけでなくて
パズル全体を見てみることも必要なのではないでしょうか。













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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
よっしーさん

はじめまして。
29歳主婦です。4ヶ月前に脳梗塞を発症、右半身麻痺、入院中。現在、足は装具をつけて歩ける程度(なんかのレベルが3?)、手は肩まで上がりますが、指がなんとか握れる程度で開きません(レベル2)。
病院では、あまり良くなることを考えていないようです。
よっしーさんのような療法士さんが近くにいてくれたら…と心底思います。
あと1ヶ月で退院です。退院後は、週1回20分程度の外来でのリハビリになります。
そこで、現状維持しか思って貰えません。
私は、もっと良くなりたい。
そこで、退院後、どのようなことをすればよいですか?
どれくらいの時間やればいいのでしょうか?
麻痺手を使うとよくかいてありますが、まだ握れないし、力も入らないので、使えません。
あと、入院中もできることがあったら教えて下さい。
病院では、1時間でほぐした後に、おはじきなどを握っています。OTさんに、自主練を何か聞いたら、今は、自分でやると、形が崩れるので、一人ではできないと言われてしまいました。
だったら、退院後どうすればいいの?という感じです。
みなこた
2010/03/09 09:15
追伸
メールに入れさせてもらいました。
みなこた
2010/03/09 09:32
みなこたさん、コメントありがとうございます。

がんばっておられるんですね。
29歳で発症からまだ4ヶ月ですから、「今は良くなっていく途上なんだ」と決してあきらめずにがんばっていただきたいと思います!

ただ、みなこたさんの場合には、がんばりかたに注意が必要なように思われました。
実際にお身体を拝見したわけではありませんが、担当のOTにお身体が硬くなりやすい…その結果として形が崩れる…と言われたことはありませんか?
もし、そうだとするといろいろな動作の練習をすることによって、余計に硬くなってしまうおそれもあります。
(特にふんばったり力んだりするような動きは硬くなりやすいものです)

それから、肩に亜脱臼があるから気をつけるように…と言われたことはありませんか?
そうだとすると、無理に左手で右手をひっぱるようなことは決して為さらないでください。肩を痛めると治りにくくその間リハビリどころではなくなってしまいます。

病院にいるうちに担当のOTにまず「生活の中で気をつけることは何か」「マヒしている手や足の扱いで気をつけるべきことは何か」確認なさることをおすすめします。
また、きっとPTも受けておられると思いますので、同じ質問を担当PTにもしてみてください。
また「自分でできる自主トレは?どこに気をつけたらいいか」担当PTにもお尋ねになってみてはいかがでしょうか?
よっしー(speranza)
2010/03/09 20:12
そのうえでのことになりますが…
クリミラーを試されるのはいかがでしょうか?
栗本慎一郎氏考案の指の動きを引き出すものです。
「クリミラー」か「栗本慎一郎」で検索してみてください。
また、もし良かったら「スポンジ」のリハビリもどうでしょうか?
2008/12/19の「スポンジを使った指のリハビリ」をご参照ください。
http://yoshiemon.at.webry.info/200812/article_22.html

手を握ったり指を曲げたり力を入れることをするのが、指のリハビリではありません。
握る、曲げることだけ行うと硬くなってしまいます。
握って開く、曲げて伸ばす…両方向の「動き」が大切なのです。
ぎゅうぎゅう握るようなリハビリは決して為さらないでくださいね。

もしも、左手で右手を開くことが可能であれば、右手を太ももの上にのせて左手で右手の手のひらや手の甲をさすってみてください。左手で右手に「指が伸びていくね」「手が開いていくね」と優しく語りかけるような気持ちで触ってみてください。左手と右手が触れ合っている部分の感覚に意識を集中してみてください。

もっと個別的なことがらについては、メールでお答えしますね。
よっしー(speranza)
2010/03/09 20:13

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