『 Buon Giorno!』 作業療法士Sより…

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zoom RSS ROM訓練再考 その2

<<   作成日時 : 2010/04/28 20:02   >>

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背臥位になっていただこうとすると背臥位になれずにゴロンと側臥位になってしまう方がいます。

別にその方がワザとゴロンと側臥位になるのではなくて
お身体が勝手にゴロンとなってしまうのです。

どう思いますか?
2択です。

1.お年寄りで猫背だからしようがない
2.リハビリすれば背臥位になれる

この流れでいけば答えは「2」になりますねぇ…(笑)
でも、リハビリすると背臥位になれるのです。ホントに。

同じような意味で
背臥位になっていただこうとすると
頭が挙上してしまって(頸部屈曲)枕に頭がつかないという方もおられます。
でも、そのような方もリハビリすると頭が枕につくようになるのです。

ROM訓練も筋力強化もしなくても
お身体の状態は変わります。

全身をみないで、いきなり個々の肘や膝を伸ばそうとしたり
個々の筋の筋力強化をしようとするから
かえって拘縮を悪化させてしまうのだと思います。

車いすで座っていてどんどん姿勢が崩れてしまう
お身体が傾いてしまう
クッションを当てたり、その都度姿勢を直すけれど
やっぱり姿勢が崩れてしまう
そういう方はたくさんおられるはずなのです。

でも、そのような方でもリハビリすると姿勢よく座っていられるようになるのです。
もちろん、工夫は必要ですが
お身体のはたらきを高めずに工夫だけしても座れるようにはなりません。

それから、こんな方もいらっしゃいます。
意思疎通が困難で
通常は車いすで仙骨座りになってしまっていてADLは全介助
この方をトランスファーしようとすると
両方の股関節がガチガチになっていて
股関節90度屈曲位を保持したままぶらさがるようにしてでしか
トランスファーできなかった方が
股関節はまだ完全伸展できないものの
両足を床に着いて膝を伸展させて
介助立位で足で自重を支えようとすることができるようになってきました。
その方のリハビリはまだ3回しかおこなっていません。

トランスファーの状態と座っている姿勢から
ROM訓練をおこなう方が多いかと思いますが
このような場合に
ROM訓練をおこなうのは百害あって一利なし…だと思います。
そして、実際に、ROM訓練をおこなわずとも状態像は改善したのです。

会話でのやりとりが困難でADL全介助の重度の認知症をもつ方でも
状態像は変わるのです。
このように状態が変わる…ということもスゴイことですが
問題は、たった3回でも、しかも重度の認知症をもつ方でも
このように状態像が変わった…ということです。
このことはいったい何を意味しているのでしょうか?

「大切なことは
 誰も見ていないことを見るのではなくて
 誰もが見ていることがらの中に
 誰も考えていないことを考えること」

これは、シュレディンガーの言葉で
私のこのウェブログの記事やコメントにも何回も繰り返し登場している言葉でもあります
(直近では「寝ていても筋肉ははたらいている」のコメント欄に登場しています)
 http://yoshiemon.at.webry.info/201004/article_14.html

私が見ている現実は、決して特別の現実ではないと感じています。
どこの施設でも似たような現実は起こっている

現実に既存の解釈を当てはめて通り過ぎるか
現実を現実のまま受けとめ、目の前の現実から考え始めようとするか
…の違いなんだと感じています。

たった3回のリハビリで状態像が変わるということは
その方は、お身体のはたらきとしてそのような能力をもっていた
もっていたけれど発揮できなかった
その能力を発揮できるようになった
…ということなのではないかと考えています。

誤解されたくはないのですが
上の文章の意味は
「できるのにやらない。やるように促したらできるようになった」
などという意味では決してありません。

動作の練習は大切ですが
動作というのは、本来、目安であって手段ではありません。
座れるように
立てるように
歩けるように
手が動くように
…などといった動作の練習を表面的におこなうだけでは
早晩、お身体を痛めてしまいます。
一時的にできるようになったとしても
お身体の張り、動きにくさ、硬さ、しびれ、痛み…といった不都合が生じてしまいます。
しかも、実感しにくいかもしれませんが
身体は常に総体としてはたらくものですから
たとえば、歩く練習で手が硬くなったり
逆に、手の練習で足や腰にしびれや痛みが出たり歩きにくくなることも往々にしてあるのです。

脳卒中後遺症をもつ方でも
認知症をもつ方でも
病気と障がいはまったく違いますが
そういう意味では同じです。

どんなふうにおこなうのか
…ということがとても大切なのです。

それは、とりもなおさず
どんなふうに見るのか
どんなふうに考えるのか
…ということがとても大切なのだということです。

車いすで仙骨座りになっていたり
トランスファーしようとしたら
股関節90度膝関節90度のままで動いた
という状態そのものが
関節可動域制限や筋力低下…などという修正すべきマイナスではなくて
その方が、なんとかしようとしてがんばった結果という「必然性」の状態なのです。

見方(考え方)を変えれば
やることも変わり
結果も変わってきます。

問題は
対象者のお身体だけではなくて
専門家と呼ばれる私たちの側にもある
…とも言えるのではないでしょうか。

もしも、本当に純粋に、その方のお身体そのものの問題だとしたら
関節可動域訓練にしろ、筋力強化にしろ
(私はしていませんが、仮にやったとしたって)
そんな3回だけのリハビリで変化があらわれるはずがない

私がうれしいのは
もちろん、状態像が変わった…ということはとてもうれしいのですが
もっとうれしいことは
重度の認知症をもつ方が
ちゃんと適応している
学習している
コミュニケートしている

どんな関係性においても
その関係性にあわせて対応している

つまり…常に能力を発揮している

それが私にはうれしい
そのことを「ともに」「体験」できたということ

そのことが
すごくすごくうれしい。のです。












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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
 「もっていたけれど発揮できなかった能力を発揮できるようになった」本当にそのとおりだと思います。                            今、週1回1日に10人程度のかたをゆっくりとリハビリしていますが以前は時間に追われ(1日に20人から30人の方をやっていました。集団も入れれば多い日では40人も見ていました)その人の能力をしっかり見つめることができていなかったと思います。今、ゆっくり見て、皆持っている能力はもっともっとあるんじゃないかと思えます。5月から本格的に復職しますが利用者の方が持っている能力をたくさん引き出せたらいいなと思います。

 私も担当のPTの方に120%も130%も自分の能力を引き出してもらいました。異動していなくなってしまったのですが半年、1年後にこんなに良くなったよって会えるようにこれからもがんばろうと思っています。
かず
2010/04/28 23:22
かずさん、コメントありがとうございます。

私も1日30人以上みていました。
その時にはお昼ご飯も食べられなかったので、チョコを常備して口の中にほおりこんでお茶を飲んで働いて…その時に思ったことは、ひとり個別で20分「も」見られたらどんなにいいだろう…ということです(苦笑)
けれど、そのような過酷な勤務は同時にポイントを見極める眼を涵養してくれたように感じています。
1日30人以上というような状況でも、悪くなった方はいませんでした。現状維持もしくは良くなっていったのです。
このことの意味を私は考えました。

マイナスを修正しようとするROM訓練や筋力強化は、能力を引き出すというリハビリの対極にある考え方です。

重度の認知症をもつ方でも「常に能力を発揮しているために現状がある」と考えてみると、同じ状態像でも全く違う見方の発見があると思うのです。

半年後1年後のかずさんの良くなった姿を見たら、担当PTの方が喜ぶのはもちろん、間近で見ているご利用者の方もきっと励まされると思います。
GOOD LUCK !
応援しています!
speranza
2010/04/29 20:53

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